グンゼと聞けば、まず肌着やストッキングを思い浮かべる人が多いでしょう。予も長いこと、そういう会社として見ていました。
ところが現在のグンゼをあらためて調べてみると、会社が向かおうとしている方向はかなり違います。高収益のメディカル、高機能プラスチックや半導体・医療向け材料を伸ばしながら、低収益部門を整理し、会社そのものを作り替えようとしている最中です。
しかも現在は高配当。株価も年初来高値からは下にあり、構造改革が成功するなら、配当だけでなく株価にも余地があるように見えます。
では、グンゼは今後も持っていてよい株なのか。今回は直近決算と事業構造を見ながら考えてみます。
現在の株価は4,000円前後
2026年9月28日のグンゼ終値は4,085円。年初来高値は4,765円、年初来安値は3,545円です。
現在のPBRは約1.19倍、予想PERは約24.6倍。極端な割安株とは言えませんが、年初来高値からは約14%低い位置にあります。
直近1カ月を見ると、おおむね4,000~4,200円の範囲で推移しています。9月1日には4,210円まで上昇しており、現在値から4,200円台へ戻ること自体は、それほど大きな値幅ではありません。
つまり今のグンゼを見る場合、「超割安株が突然評価される」というより、構造改革と利益改善によって再び4,200円、4,500円、その先へ評価を上げられるか、という見方になります。
グンゼはいま会社そのものを作り替えている
現在の中期経営計画「VISION 2030 stage2」で、グンゼは2025~2027年度を「創りかえる3年間」と位置づけています。
会社が成長分野として明確に挙げているのが、機能ソリューションとメディカルです。
機能ソリューションでは、プラスチックフィルムやエンジニアリングプラスチックスを展開しています。特にエンプラでは工場を増設し、半導体・医療用途向けの生産能力を強化しています。
メディカルでは、人工皮膚、組織補強材、骨接合材、人工硬膜、吸収性癒着防止材などを扱っています。グンゼが長年培ってきた繊維や高分子技術を、医療材料へ転用してきた事業です。
単に新しい事業へ手を出しているわけではありません。昔から持っていた技術を、より利益率の高い市場へ移している。予にはここが面白く見えます。
メディカルは本当に儲かるのか
「医療は成長分野です」と言うだけなら、どこの会社でもできます。重要なのは、実際に利益が出ているかどうかです。
グンゼのメディカル事業は、会社全体ではまだ巨大ではありません。しかし利益率は高く、会社自身も今後の成長柱として明確に扱っています。
2025年度計画では、メディカル売上高は前年比20.5%増を見込みました。人工皮膚、組織補強材、骨接合材などの海外展開に加え、国内では癒着防止材の販売拡大を進めています。
そして需要増に対応するため、京都府綾部市に第三工場を新設。2025年から新工場を稼働させています。
増産設備を作るということは、少なくとも会社自身は「売れるものがある」と判断して資本を投じているということです。
第三工場では、手術後の臓器癒着を防ぐ吸収性癒着防止材などの生産能力を増強しています。研究開発施設も強化し、次世代製品の開発も同時に進めています。
予がグンゼを今すぐ売りたいと思わない最大の理由は、ここです。
低収益事業を削るだけの会社ではなく、その裏側で高収益になり得る医療事業へ実際に設備投資している。
縮むだけの会社と、入れ替わろうとしている会社は違います。
機能ソリューションにも強みがある
もう一つの柱が機能ソリューションです。
グンゼはプラスチックフィルム、エンジニアリングプラスチックス、メカトロニクスなどを持っています。シュリンクラベル用フィルムや半導体・医療向け樹脂部材など、一般消費者には見えにくいBtoB製品です。
こちらも会社は生産設備を増強しています。愛知県江南市のエンプラ工場では増設を進め、半導体・医療用途の需要拡大を取り込もうとしています。
一方で2026年は原油・ナフサ価格上昇の影響も受けました。収縮フィルムでは原材料費上昇を理由に値上げも実施しています。
ここで見るべきなのは、原料高そのものではありません。
値上げしても顧客が離れず、利益率を維持できるか。
それができるなら、製品に競争力があるということになります。
1Qは利益が大きく改善
2027年3月期第1四半期では、営業利益が前年同期比で大きく改善しました。
会社は現在、構造改革費用を抱えながらも、機能ソリューションやその他の利益改善によって収益力を立て直そうとしています。
ここで重要なのは、会社が単純な売上拡大を狙っているわけではないことです。
低ROIC事業を整理し、高ROIC事業へ資本を回す。会社自身がPBR1倍以上、ROE8%以上を目標として掲げています。
昔ながらの「売上が大きければ立派」という経営ではなく、どれだけ効率よく利益を作れるかへ軸足を移しています。
高配当は魅力だが、永遠ではない
現在のグンゼを語るうえで、配当も外せません。
会社の基本方針はDOE4%以上。さらにROEが8%以上になるまで、特別配当や自己株式取得を組み合わせ、還元性向100%超の株主還元を機動的に行う方針です。
直近配当は、普通配当147円に特別配当69円を加えた216円。
株価4,085円なら、216円配当の利回りは約5.3%になります。
かなり高い。
一方で69円は文字通り特別配当です。ROEが8%以上へ改善していけば、特別配当を続ける理由は薄くなります。
これは少し面白い構造です。
会社が良くなればなるほど、特別配当が終わる可能性がある。
高配当だけを目的に持っている人には悩ましい。一方で会社がROE8%へ近づくほど株式市場からの評価が高まり、株価が上がる可能性もあります。
配当が少し減る代わりに株価が上がるなら、それはそれで株主にとって悪い話ではありません。
配当株から「構造改革株」へ変わる可能性
予には、今のグンゼがちょうど境目にいるように見えます。
現在は高配当株です。
しかし数年後には、「5%を超える配当があるから買う株」ではなく、メディカルや機能材料の成長、ROE改善、事業ポートフォリオ改革を評価して買われる会社になる可能性があります。
もしそうなるなら、現在の4,000円前後から株価が上へ動く余地もあります。
実際、年初来高値は4,765円です。
4,200円や4,300円へ戻る程度なら、業績改善が続くだけでも十分考えられる範囲です。
現在から4,250円まで上がれば約4%。100株なら現在より約1万6,500円、含み益が増える計算になります。
株価4,500円なら、現在から約10%上昇です。
構造改革が数字として見えてくれば、この程度の再評価はそれほど荒唐無稽でもありません。
次の勝負は11月5日
次回の第2四半期決算は2026年11月5日の予定です。
ここで予が見るのは三つです。
- メディカルが増収を続けているか
- 機能ソリューションの利益が原材料高の中でも維持されているか
- 構造改革による利益改善が会社全体へ表れ始めているか
この三つが確認できれば、グンゼは「配当が高いから持つ株」から「利益構造そのものが変わる株」へ一段進みます。
逆にここが崩れるなら、現在の高配当を受け取っている間に出口を考える理由が強くなります。
そして易に問う
さて。
数字を眺めただけでは終わらぬのがマスターJです。
グンゼについて易に問うてみました。
出た本卦は――
風地観(ふうちかん)。
そして第三爻と上爻が変じ、変化後の卦は、
水山蹇(すいざんけん)。
「観」は、その字の通り観る卦です。
急いで動くより、まず全体を見る。表面だけではなく、その奥にある流れを観察する。
これは今のグンゼを見るには妙に似合っています。
配当5%。
これだけを見れば買いたくなる。
工場閉鎖。
これだけを見れば不安になる。
メディカル新工場。
これだけを見れば成長企業にも見える。
どれか一つだけを見て結論を出すのではなく、全体を見る。
まさに「観」です。
第三爻――進むか退くか、自らを見る
今回動いた一つ目は第三爻です。
風地観の第三爻には、自分自身のあり方を観察し、進むべきか退くべきかを考える意味があります。
これもまた投資にそのまま重なります。
会社が良いか悪いかだけではありません。
自分はなぜこの株を持っているのか。
配当を取りたいのか。
値上がりを狙うのか。
長期で会社の変化を見届けるのか。
自分の目的を見なければ、売買判断は定まりません。
上爻――最後まで観る
もう一つ動いたのが上爻です。
物事を高い場所から眺め、全体を観る位置です。
グンゼの場合、目の前の配当だけでなく、その先を見る。
特別配当が終わる。
しかしROEが改善する。
工場を閉じる。
しかし医療工場は増設する。
売上を縮める事業がある。
しかし高収益事業へ資本を移す。
一つのニュースだけで判断すると、正反対の結論が出てしまいます。
ゆえに観る。
変化後は水山蹇
そして変化後に出たのが水山蹇。
「蹇」は、進みにくい、困難がある、足元に障害があるという卦です。
今回の占い画面でも判定は「慎重寄り」。
無理押しは避け、問題点を直してから動く方が扱いやすい、と出ています。
これもグンゼの現状と不思議と重なります。
会社は成長分野を持っている。
されど、すべてが順風満帆というわけではない。
新工場には償却負担がある。
機能材料には原料高がある。
構造改革には費用がかかる。
高配当にも終わりがあるかもしれない。
進めぬわけではない。
しかし、急ぐ道でもない。
そして老子はこう言う
知足不辱、知止不殆。
足るを知れば辱められず、止まるを知れば危うからず。
今回、玄庵式易占が選んだ一句です。
もっと上がるかもしれない。
もっと配当をもらえるかもしれない。
もう少し待てば。
投資をしていると、「もう少し」が際限なく現れます。
一方で早く降りすぎれば、後から伸びる株を捨てることにもなる。
足るを知る。
止まる時を知る。
簡単そうで、これが一番難しい。
予は今のグンゼをどう見るか
予なら、今のグンゼをすぐには捨てません。
理由は配当だけではありません。
メディカルには実際の需要があり、新工場まで作っている。機能ソリューションにも半導体・医療という成長先がある。そして会社全体では、低収益事業を整理してROEを引き上げようとしています。
つまり株価をもう一段押し上げる材料は、まだ残っています。
一方で、現在の216円配当が永遠に続くとは見ません。
ゆえに永久保有と決める必要もない。
次の決算を観る。
利益改善を観る。
メディカルの成長を観る。
市場がグンゼを見る目の変化を観る。
そのうえで、十分なところまで株価が来たなら降りればよい。
風地観。
まず観よ。
水山蹇。
急ぐな。
そして老子曰く、
知足不辱、知止不殆。
さて、グンゼは肌着の会社から、何の会社へ変わっていくのでしょうな。
しばし、観るとしましょうかのう。
ふぉっふぉっふぉっふぉっ。
※本記事は公開されている決算資料、IR情報、株価情報などをもとにした企業分析および筆者個人の考察です。特定銘柄の売買を推奨するものではありません。
※易経・老子を用いた部分は、企業や相場について考えるための思想的・娯楽的な試みです。
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