次世代太陽電池として注目されている「ペロブスカイト太陽電池」。
軽く、薄く、曲げることができるため、従来のシリコン太陽電池では設置が難しかった工場や倉庫の屋根、建物の壁面などへの普及が期待されています。
2026年に入り、実証実験だけでなく実際の事業化も始まり、いよいよ「研究テーマ」から「産業」へ移行する段階に入ってきました。
そこで今回は、ペロブスカイト太陽電池関連銘柄として名前が挙がることの多い、
伊勢化学工業(4107)
K&Oエナジーグループ(1663)
積水化学工業(4204)
の3社を比較してみます。
同じ「ペロブスカイト関連」でも、実は3社の立ち位置はかなり違います。
そもそも、なぜヨウ素メーカーが関連銘柄なのか
日本で開発が進むハライド系ペロブスカイト太陽電池では、ヨウ素系材料が重要な原料の一つになります。
ヨウ素は生産できる地域が限られた資源で、日本は世界有数の生産国です。
つまりペロブスカイト太陽電池が本格普及した場合、太陽電池メーカーだけではなく、原材料であるヨウ素を供給する企業にも需要拡大の恩恵が及ぶ可能性があります。
もっとも、すべてのペロブスカイト太陽電池が同じ材料構成になるとは限らず、技術革新によって必要な原料や使用量が変化する可能性はあります。
そこで投資対象として見る場合は、
「太陽電池そのものを作る企業」と「材料を供給する企業」では、利益の出方が違う
という点を意識しておきたいところです。
① 伊勢化学工業(4107)――ペロブスカイト原料への期待なら最も分かりやすい
伊勢化学工業は世界屈指のヨウ素メーカーです。
同社によれば、世界で年間約3万5,800トン生産されるヨウ素のうち、伊勢化学だけで世界生産量の10%強を生産しています。
そして伊勢化学の面白いところは、単純に「ヨウ素を作っているからペロブスカイト関連」という段階から、さらに一歩踏み込んでいることです。
2026年2月には稀産金属と、ペロブスカイト太陽電池向けヨウ素系材料の供給体制強化について基本合意。ヨウ化鉛などの原料調達から製造・販売までの一貫したサプライチェーン構築を目指しています。
これは投資家目線ではかなり重要です。
ペロブスカイト市場が拡大するのをただ待っているのではなく、
「ペロブスカイト向け材料そのものを新しい事業機会として取りにいっている」
からです。
伊勢化学の強み
最大の魅力は、ペロブスカイト太陽電池市場が拡大した際の「テーマ純度」の高さでしょう。
積水化学のような巨大な総合化学メーカーでは、ペロブスカイト事業が伸びても会社全体への影響は薄まります。
伊勢化学はヨウ素事業そのものが会社の中心です。
そのため、ペロブスカイト向けヨウ素材料の需要が本格的に増加した場合、業績へのインパクトが比較的大きくなる可能性があります。
またヨウ素には、X線造影剤、殺菌剤、電子材料など既存需要もあります。
つまり、
既存需要のあるヨウ素事業+ペロブスカイトという新需要
という構図になっています。
伊勢化学の注意点
一方、ペロブスカイト期待が高い分、株価にもテーマ性が反映されやすい銘柄です。
「ペロブスカイトが普及する」というだけでなく、
実際にどのくらいヨウ素需要が増えるのか
1GWあたりどれだけ材料が必要になるのか
材料価格は維持できるのか
技術革新によってヨウ素使用量が減らないか
まで考える必要があります。
つまり、3社の中では最も夢が大きい代わりに、期待先行にもなりやすい銘柄と言えそうです。
② K&Oエナジーグループ(1663)――ヨウ素を持ちながら安定事業もある
K&Oエナジーグループも世界有数のヨウ素生産会社です。
同社グループは世界のヨウ素生産量の約5%を生産しています。
伊勢化学と比較すると世界シェアは小さいものの、それでも単独企業グループで世界供給量の約5%を握っていることを考えると、かなり大きな存在です。
K&Oの特徴は、ヨウ素だけの会社ではないこと。
天然ガスやエネルギー事業を持っているため、ペロブスカイト一本足ではありません。
K&Oの強み
投資対象として考えた場合、この「ペロブスカイトへの純度の低さ」は欠点でもあり、長所でもあります。
ペロブスカイトの普及が予想より遅くても、既存のヨウ素需要や天然ガス事業があります。
ヨウ素自体もペロブスカイト専用品ではなく、造影剤、殺菌・防かび剤、液晶関連など幅広い用途があります。
したがってK&Oは、
「ペロブスカイトだけに賭けるのは怖いが、ヨウ素需要の長期成長には乗りたい」
という投資家には比較的分かりやすい銘柄だと思います。
また同社はヨウ素需要の拡大を見込み、生産設備の拡充も進めています。K&Oヨウ素では、大規模生産設備と小規模・機動的な生産方式を組み合わせ、需要増加に対応する方針を示しています。
K&Oの弱点
一方、ペロブスカイトが大成功した場合の株価インパクトという点では、伊勢化学より薄くなる可能性があります。
ヨウ素の世界シェアは約5%で、会社全体にも天然ガスなど別の事業があります。
つまり、
下値を既存事業が支えやすい代わりに、ペロブスカイト一本で会社が化ける期待も相対的には小さい
という位置づけです。
ペロブスカイト「テーマ株」として見るより、国産資源を持つヨウ素・エネルギー株にペロブスカイトという成長オプションが付いている、と考えた方がしっくりきます。
③ 積水化学工業(4204)――原料ではなく「太陽電池そのもの」を売る会社
伊勢化学とK&Oが原料側なのに対し、積水化学は全く立場が違います。
積水化学は長年フィルム型ペロブスカイト太陽電池を開発してきましたが、2026年3月、ついに「SOLAFIL」として事業化を開始しました。
2026年度は既存設備による限定生産から始め、2027年度には100MW規模の生産ラインを立ち上げる計画です。
これは大きな変化です。
これまでのペロブスカイト投資は、
「将来実用化されるかもしれない」
という段階でした。
現在の積水化学は、
「実際に製品を供給し、量産へ移行する」
段階に入っています。
積水化学の強み
最大の強みは当然、ペロブスカイト太陽電池そのものを販売できることです。
普及した場合、原材料価格の上昇だけではなく、モジュール販売の売上そのものを取り込めます。
しかも積水化学のSOLAFILはフィルム型。
従来型の太陽光パネルでは重量などの問題で設置できなかった場所を狙っています。
2026年の事業開始では、自治体や高速道路会社などへの製品提供からスタートしており、すでに社会実装段階に入っています。
したがって3社の中では、
ペロブスカイト太陽電池の商用化そのものに最も直接投資できる企業
と言えるでしょう。
積水化学の弱点
問題は、積水化学が巨大企業であることです。
住宅、モビリティ、ライフサイエンス、インフラなど幅広い事業を抱えているため、ペロブスカイトが成長しても、短期的には会社全体への利益貢献が限定される可能性があります。
さらに量産には巨額の投資が必要です。
積水化学は100MW規模の生産設備へ大規模な投資を計画しています。量産に成功し、価格を下げ、補助金に頼らなくても競争できる事業に育てられるかが今後の重要ポイントになります。会社側も100MW段階ではシリコン型よりコストが高いと認識しています。
つまり、
成功すれば産業の主役になれるが、そのために巨額の設備投資と量産化リスクを負っている
という会社です。
3社を比較するとどうなる?
| 銘柄 | ペロブスカイトでの立場 | 期待度 | 安定性 | 主な特徴 |
|---|
| 伊勢化学工業 | ヨウ素・ヨウ素系材料 | ★★★★★ | ★★★ | 原材料への直接度が高い |
| K&Oエナジー | ヨウ素 | ★★★ | ★★★★ | 資源・エネルギー事業との分散 |
| 積水化学工業 | 太陽電池メーカー | ★★★★★ | ★★★★★ | SOLAFILを実際に事業化 |
面白いのは、どれが絶対的に優れているという話ではなく、どの段階に投資したいかによって選択が変わることです。
原料価格上昇・ヨウ素需要拡大を狙う
→ 伊勢化学工業
ペロブスカイト向け材料事業まで積極的に取りにいっており、3社の中ではテーマ性が最も強い。
ペロブスカイトも欲しいが既存事業の安定性も欲しい
→ K&Oエナジーグループ
ヨウ素という希少な資源を持ちながら、天然ガスなど他の収益源もある。
ペロブスカイト太陽電池そのものの普及に賭けたい
→ 積水化学工業
すでにフィルム型ペロブスカイト太陽電池の事業化を開始し、2027年度の100MW量産ラインを目指している。
個人的に面白いのは「伊勢化学+積水化学」
この3社を調べていて個人的に面白いと感じるのは、伊勢化学と積水化学では投資している場所がまるで違うことです。
積水化学は「完成品側」。
伊勢化学は「原料側」。
仮に将来、積水化学以外のメーカーも含めてペロブスカイト太陽電池市場そのものが大きくなれば、材料メーカーは複数メーカーの成長をまとめて享受できる可能性があります。
一方、積水化学が独自のフィルム型技術で大きなシェアを獲得すれば、完成品メーカーとしての利益は原材料メーカー以上に大きくなる可能性があります。
これは半導体投資で、
半導体メーカーを買うのか、製造装置・材料メーカーを買うのか
という話に少し似ています。
どこが最終的な勝者になるか分からないなら、サプライチェーンの異なる場所を持つという考え方もできます。
ペロブスカイト関連株で最も注意したいこと
ペロブスカイト太陽電池は魅力的なテーマですが、「国策だから必ず儲かる」と考えるのは危険です。
今後確認したいのは、
実際の量産コスト
耐久性
シリコン太陽電池との価格競争
政府補助終了後にも需要が続くか
国内メーカーが海外勢との競争に勝てるか
ヨウ素など原材料の使用量が今後どう変化するか
です。
特に投資では、
技術が普及することと、その会社の株主が儲かることは別問題
です。
良い技術でも設備投資が重すぎれば利益は出ません。
市場が巨大になっても競争が激化すれば利益率は下がります。
原材料需要が増えても、それ以上に生産量が増えれば価格は上がりません。
このあたりは冷静に見ておきたいところです。
まとめ
ペロブスカイト太陽電池関連株として3社を比較すると、かなり性格が違います。
伊勢化学工業
→ 原材料への直接度が高く、ペロブスカイト材料にも積極的。テーマ性重視。
K&Oエナジーグループ
→ 世界有数のヨウ素メーカーでありながら、天然ガスなど既存事業もある。安定性重視。
積水化学工業
→ フィルム型ペロブスカイト太陽電池を実際に事業化。完成品市場の成長を直接取りにいく。
個人的には、
「ペロブスカイトが普及した時、誰が一番儲かるのか?」
だけでなく、
「ペロブスカイトが予想ほど普及しなかった時でも、その会社を持ち続けられるか?」
という視点も重要だと思っています。
その意味では、
大きな成長期待なら伊勢化学
資源株としての安定性ならK&O
事業化の本命なら積水化学
という見方ができそうです。
2026年は積水化学がSOLAFILの事業化を開始し、伊勢化学もペロブスカイト材料のサプライチェーン構築へ動き始めました。
「いつか実用化する技術」を買う段階から、「実際に量産が始まった時、どこに利益が落ちるのか」を考える段階へ入ってきたのではないでしょうか。
※本記事は特定銘柄の売買を推奨するものではありません。投資判断は各社の最新IRや決算資料を確認したうえで自己責任でお願いします。