2026年9月4日金曜日

三井物産(8031)を2010年に買った予が、2026年の決算をもう一度読む――「多ければ則ち惑う」

 


2010年。

予が株式投資を始めた頃、投資候補はいくつもありました。

その中で実際に資金を投じた会社の一つが、**三井物産(8031)**です。

当時の三井物産の株価を、現在と比較できるよう2024年の1対2株式分割を調整した数字で見ると、

  • 2010年始値 661円

  • 年間高値 832円

  • 年間安値 497円

  • 年末終値 670円

でした。

株式分割前の当時の画面で見えていた株価に直せば、おおむね1,000~1,600円台です。

そして2026年9月4日の終値は、

5,019円。

2010年末の分割調整後670円と比べると、約7.5倍です。2010年の年間高値832円から見ても約6倍、安値497円なら約10倍になります。

もちろん予が2010年の底値を完璧に買った、などという話ではありません。

重要なのはそこではない。

十数年前に買った会社が、今なお日本を代表する企業として残り、株価も企業価値も大きく変わった。

では2026年現在、この会社にはまだ「理」があるのか。

最新決算から見てみましょう。

最新決算――第1四半期利益は過去最高

三井物産が2026年8月4日に発表した2027年3月期第1四半期決算。

親会社株主に帰属する四半期利益は、

2,941億円。

前年同期の1,916億円から、

1,025億円、約53%増。

第1四半期としては過去最高となりました。

基礎営業キャッシュ・フローも、

2,163億円 → 2,809億円

と646億円増えています。

会社の2027年3月期通期計画は、

  • 当期利益 9,200億円

  • 基礎営業キャッシュ・フロー 1兆500億円

です。

まだ第1四半期なのに、利益はすでに年間計画の32%、基礎営業キャッシュ・フローも**27%**まで進んでいます。

単純に4倍して「年間1兆1,764億円だ!」などと考えるのは早計です。

今回の利益には資産リサイクル益や企業価値評価に伴う利益も含まれているからです。

それでも、出足がかなり良いこと自体は間違いありません。

三井物産はもう「資源だけの会社」ではない

総合商社というと、

「鉄鉱石」
「石油」
「LNG」

というイメージが強い。

三井物産も依然として資源・エネルギーの巨大な権益を持っています。

今回の第1四半期利益を見ると、

  • 金属資源 612億円

  • エネルギー 344億円

  • モビリティ・デジタル・インフラ 730億円

  • 化学品 266億円

  • ウェルネスエコシステム 184億円

  • イノベーション&コーポレートディベロップメント 652億円

となっています。

ここが現在の三井物産を見るうえで面白いところです。

金属資源だけで食っている会社ではありません。

モビリティ、デジタルインフラ、化学品、医療・健康分野、事業投資、エネルギー。

利益を生む水源がかなり多い。

もちろん資源価格が動けば利益も大きく動きます。

しかし一つの井戸が枯れたら終わる会社ではなくなっている。

巨大商社とは、世界中に何本もの水路を引き、その時々で流れの強い場所から水を集める存在とも言えます。

むしろエネルギーはこれから寄与する

第1四半期のエネルギー部門の利益進捗率は**17%**にとどまっています。

一見すると悪い。

ところが会社自身は、

「エネルギーは第2四半期以降に本格的な貢献を見込む」

と説明しています。

年間計画2,000億円に対して、第1四半期は344億円。

ここが予定どおり後半へ向かって伸びてくるなら、ほかの部門ですでに高い進捗を出していることも合わせ、年間9,200億円という利益計画は十分射程に入っているように予には見えます。

むしろ今後見るべきなのは、

「9,200億円を達成できるか」より、「どこまで上振れ余地が残っているか」

ではないでしょうか。

とはいえ第1四半期の数字をそのまま信じてはいけない

ここで水面を静かにしておきます。

今回、非常に進捗率が高い部門があります。

イノベーション&コーポレートディベロップメントです。

年間利益計画700億円に対して、第1四半期だけで652億円

進捗率はなんと93%

これだけ見ると、とてつもない成長事業に見えます。

実際には資産リサイクル益などが大きく寄与しています。

つまり、

2,941億円という第1四半期利益のすべてが毎四半期繰り返されるわけではない。

ここは分けて考える必要があります。

一方で、会社全体として基礎営業キャッシュ・フローが2,809億円まで伸びている。

利益だけではなく、事業から金を生み出す力も強い。

予はこちらの方を重く見ます。

2,000億円の自社株買い

そして三井物産は今回、

上限2,000億円の自己株式取得

を発表しました。

取得期間は2026年8月5日から2027年1月29日まで。

取得した株式は、その後すべて消却する予定です。

さらに年間配当予想は、

1株140円。

2026年3月期の115円から25円増える計画です。

会社は中期経営計画2029の期間中、140円以上を基準とする累進配当を掲げています。

基礎営業キャッシュ・フローに対する株主還元割合の目標も、50%超へ引き上げました。

2021年3月期の分割調整後配当42.5円から、2027年3月期予想140円。

会社資料によれば、この間の配当の年平均成長率は**22%**です。

昔の三井物産と、今の三井物産。

同じ8031でも、株主への金の返し方はかなり変わったと感じます。

今の5,000円は高いのか

2026年9月4日の終値5,019円。

会社予想EPSは約324.6円なので、予想PERはおよそ15倍台

PBRもおおむね1.6倍前後です。

2010年の株価から見れば、とんでもなく上がっています。

だからといって、

「昔670円だった株が5,000円だから高い」

とは言えません。

株価だけが7倍になったわけではないからです。

事業規模も利益水準も株主還元も、当時とは別物になっています。

逆に、昔安かったという理由だけで今も割安だとも言えません。

見るべきものは過去の値札ではない。

現在の会社が、現在の5,000円という値段に見合うだけの金を将来生み出せるか。

そこです。

予はこの先をどう見るか

予の見立てでは、今後1~数年の三井物産はかなり面白い位置にいます。

第一に、今期9,200億円の利益計画に対して第1四半期32%という好進捗。

第二に、第1四半期ではまだ利益進捗17%にとどまるエネルギー事業について、会社は第2四半期以降の本格寄与を見込んでいる。

第三に、過去に行った成長投資の中から、天然ガス、LNG、鉄鉱石、デジタルインフラ、モビリティなど複数の案件が今後順次収益へ貢献する計画になっています。

第四に、強いキャッシュ創出を背景として、累進配当と自社株買いを同時に進めている。

この組み合わせなら、現在の年間利益9,200億円近辺を一つの土台として、次の利益水準へ進む可能性はあります。

予なら現時点では、

「今期計画は達成圏。資源市況が大きく崩れず、予定しているエネルギー案件が寄与すれば上振れの余地もある」

と読みます。

一方、三井物産は世界中に事業を持つ会社です。

鉄鉱石、銅、原油、天然ガスなどの商品価格。

為替。

各国の景気。

金利。

地政学。

投資先企業の価値。

あまりにも多くのものが利益へ影響します。

そして、ここで老子です。

「多ければ則ち惑う」

『老子』第二十二章に、

「少則得、多則惑」

という言葉があります。

日本語で読めば、

「少なければ則ち得、多ければ則ち惑う」

です。

多くのものを求めすぎれば、かえって迷う。

これは投資にもそのまま当てはまるように思います。

2010年の予の前にも、買えそうな株はいくつもありました。

あの株も欲しい。

この株も面白い。

こっちも上がりそうだ。

しかし財布は有限です。

結局、その中から三井物産という一つを選びました。

今なら毎日、何千という銘柄の株価が見える。

SNSを開けば、

「次はこれだ」

「この株が10倍になる」

「今買わないと間に合わない」

そんな情報が際限なく流れてきます。

全部を追えば、かえって何も見えなくなる。

そして三井物産自身もまた、世界中に無数の投資機会を持ちながら、会社資料では何度も**「投資規律」「厳選」**という考えを掲げています。

金があるから何でも買うのではない。

機会が多いから全部取るのでもない。

選ぶ。

捨てる。

一つを抱く。

投資する者にも、投資される企業にも、同じ理があるのかもしれません。

2010年から十数年。

三井物産の株価は、分割調整後670円前後から5,000円台まで来ました。

それでも最新決算を見る限り、会社そのものはまだ止まってはいません。

新しい事業へ金を流し、

古い資産を入れ替え、

稼いだ金を株主へ返し、

また次の収益源を作ろうとしている。

では、次にどの株を買うのか。

どのテーマを追うのか。

どの情報を信じるのか。

相場には誘惑が多すぎます。

ゆえに最後は、この言葉に戻るとしましょう。

少なければ則ち得。

多ければ則ち惑う。

ふぉっふぉっふぉっふぉっ。

※本記事は筆者の投資経験および公開資料を基にした企業分析・考察です。特定銘柄の売買を推奨するものではありません。

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