2026年8月18日火曜日

タウンズ(197A)は買いか?コロナ特需後でも注目したい診断薬メーカー

 


感染症の流行というのは、非常に予測しにくいものです。

コロナやインフルエンザが突然流行すると、医療機関から診断キットの注文が一気に増えます。

メーカーや医薬品卸は急いで在庫を確保しますが、流行が突然終わることもあります。

すると今度は大量の在庫が余ります。

しかも体外診断用医薬品には有効期限があります。

この「需要が突然爆発し、突然消える」という特徴は、感染症診断薬ビジネスの大きな難しさだと思います。

そんな中で個人的に面白いと思っているのが、感染症迅速診断キット大手の**タウンズ(197A)**です。

タウンズは1987年創業の体外診断用医薬品メーカーで、インフルエンザ、新型コロナ、RSウイルス、ヒトメタニューモウイルス、ノロウイルスなど幅広い感染症向け迅速診断キットを開発・製造・販売しています。会社自身も感染症迅速診断キットの最大手企業の一社と説明しています。

コロナ特需終了後は業績面で苦戦していますが、会社の動きを見ていると「何もしていない会社」には見えません。

むしろ、診断薬ビジネスの弱点をかなり理解して商品改良を進めているように感じます。


感染症診断薬は「在庫」が難しい

診断薬という商品は少し特殊です。

インフルエンザなどが流行すれば、一つの地域だけでも急激に注文が増えることがあります。

ところが感染が落ち着けば、需要も急速に減ります。

メーカー側からすると、

在庫を少なくする
→ 流行時に品切れする

大量に生産する
→ 流行終了後に在庫が余る

という難しい判断を迫られます。

卸や医療機関も同じです。

前シーズンに大量在庫を抱えて痛い目を見ると、翌年から在庫を極力持たなくなります。

すると今度は、突然患者が増えた時に、

「診断キットがない」

という状態になります。

さらに需要が急増するとメーカー側が出荷制限を行う場合もあり、過去の販売実績などによって配分されることもあります。

必要な患者がいるのに商品がない。

これは医療現場の問題であると同時に、メーカーや卸にとっては販売機会の損失でもあります。


タウンズの新製品は「有効期限22か月」

ここで注目したいのが、2026年8月にタウンズが発表した新型コロナ・インフルエンザ同時抗原検査キット、

「イムノエース SARS-CoV-2/Flu Ⅱ」

です。

同製品は2026年7月31日に国内製造販売承認を取得しました。

従来製品から大きく改善された点が二つあります。

まず判定時間。

従来は15分でしたが、新製品では10分へ短縮されました。

そしてもっと面白いのが有効期間です。

従来は製造後12か月だったものが、新製品では22か月へ大幅に延長されています。

これはかなり大きな改良だと思います。


有効期限延長は「廃棄ロス削減」だけではない

有効期限が長くなると、まず思いつくのは廃棄削減です。

もちろんそれも重要です。

しかし投資家目線では、それ以上の意味があると考えています。

例えばインフルエンザシーズンに大量の検査キットを仕入れたとします。

シーズンが早く終わって在庫が余っても、12か月しか期限がなければ次の流行期には使いにくくなる可能性があります。

ところが22か月あれば、

「今シーズンで余っても次のシーズンまで持っておけばよい」

と考えやすくなります。

すると卸や医療機関も、在庫を以前より積極的に持てるようになります。

これは非常に重要です。

在庫を持てるということは、

突然注文が入った時にすぐ売れる

ということだからです。

つまり有効期限延長は単なるコスト削減ではなく、

販売機会そのものを増やす可能性がある

ということです。


メーカー・卸・医療機関すべてにメリット

有効期限22か月、判定時間10分という改良をそれぞれの立場から考えてみます。

メーカー

流行終了後の在庫廃棄リスクを抑えやすくなる。

極端な増産と減産を繰り返す必要も減らせる可能性があります。

医薬品卸

「余ったらどうしよう」という不安が減るため、営業所などに在庫を置きやすくなります。

その結果、突然の注文に対応しやすくなります。

医療機関

必要な時に製品を確保しやすくなるうえ、判定時間短縮によって診療効率も改善します。

15分が10分になるだけと思うかもしれません。

しかし一日に何十人も検査する医療機関では、5分の差が積み重なります。

患者側にとっても結果を待つ時間が短くなります。

つまり今回の製品改良は、

メーカー
+卸
+医療機関
+患者

すべてにメリットがある改良です。

こういう商品改良を見ると、少なくともタウンズは現場で何が問題になるのかをかなり考えている会社だと感じます。


診断薬ビジネスそのものも面白い

個人的には、医薬品の中でも診断薬は面白いビジネスだと思っています。

治療薬は基本的に病気になった人が使います。

診断薬は、

「もしかしたら病気かもしれない」

という段階で使われます。

検査結果が陰性でも、検査キット一回分の需要は発生します。

しかも感染症の場合、

  • 本人

  • 家族

  • 学校

  • 職場

  • 高齢者施設

  • 医療機関

など非常に広い範囲で検査需要が発生します。

流行が大きくなれば、一人が複数回検査を受けるケースもあります。

もちろん感染症が流行しなければ売上は減ります。

逆に言えば、新しい感染症が出てくれば新しい市場が生まれる可能性もあります。

タウンズは現在の感染症領域だけでなく、慢性疾患や新しいPOCT、SaMD、受託検査などへ事業領域を広げる方針を示しています。


コロナ特需終了後の業績悪化は無視できない

もちろん良いところだけを見るのは危険です。

タウンズはコロナ禍で大きな需要を取り込みました。

その反動で、現在は新型コロナ関連製品の販売減少や流通在庫調整の影響を受けています。

感染症診断薬はどうしても流行状況によって業績が振れます。

つまり、

「感染症診断薬だから安定成長する」

という会社ではありません。

ここは投資するなら理解しておく必要があります。

一方で今回の有効期限延長は、まさにこの「需要変動による在庫問題」を小さくするための一つの回答にも見えます。

会社が自分の事業の弱点を理解して、それに対する商品を作っている。

私はこういう企業を比較的信用しやすいです。


新しい中期経営計画もかなり積極的

タウンズは2026年7月に中期経営計画を更新しています。

会社は抗原検査のラインナップ強化に加えて、

  • 新規POCT

  • SaMD

  • 受託検査

などを新しい収益源として育てる方針です。

計画上では2026年6月期から2031年6月期に向けて売上成長を目指しています。

つまり会社自身も、

「コロナ診断薬一本で将来も稼ぐ」

とは考えていません。

既存の感染症迅速診断キットを土台にしながら、新しい検査領域へ広げていこうとしています。

ここも評価したいところです。


配当も29円を起点とする累進配当へ

タウンズは株主還元にも比較的積極的です。

2027年6月期から2031年6月期までの中期経営計画期間では、

1株29円を起点とする累進配当

を導入しています。

累進配当とは、基本的に配当を減らさず、維持または増配していく方針です。

さらに会社は市場環境などを見ながら自社株買いも検討するとしています。

成長株でありながら配当もある。

これはNISAで長期保有する候補としては悪くありません。


タウンズのリスク

もちろんリスクもあります。

感染症流行に業績が左右される

コロナ特需の反動がその典型です。

新製品が売れるとは限らない

22か月の有効期限や判定時間短縮は優れていますが、競合製品との価格差や営業力も重要です。

新規事業が計画通り育つ保証はない

POCT、SaMD、受託検査などへの展開は魅力的ですが、投資先行になる可能性もあります。

大株主の売却

上場前から投資しているファンド系大株主が大きな持分を持っているため、将来的な株式売却が株価の上値を抑える可能性もあります。

ここは長期投資するなら意識しておきたい部分です。


それでもタウンズは「悪くない会社」だと思う

タウンズは現在、コロナ特需が終わって一見すると勢いを失った企業に見えます。

しかし会社の動きを見ると、

有効期限を12か月から22か月へ延長
判定時間を15分から10分へ短縮
感染症以外の診断領域へ拡大
新規POCT・SaMD・受託検査を育成
累進配当を導入

と、やるべきことはかなりやっています。

特に私は有効期限22か月という改良を高く評価しています。

これは単なる製品スペックではありません。

感染症診断薬ビジネスで長年問題になってきた、

「突然売れる。しかし突然売れなくなる」

という在庫リスクに直接効くからです。

卸が安心して在庫を持てれば、その分だけ突然の注文に対応できます。

結果としてメーカーにとっても販売機会が増えます。

こういう地味だけれど商売の本質に効く改良をする会社は、長期的に見ても面白いと思います。


まとめ

タウンズを一言で表すなら、

「コロナ特需で終わった会社ではなく、特需後の診断薬ビジネスを作り直している会社」

だと思います。

現在の業績だけを見ると魅力が分かりにくい銘柄です。

しかし、

  • 感染症迅速診断キット大手

  • 商品改良能力

  • 長期保存化

  • 判定時間短縮

  • 新規診断領域への進出

  • 累進配当

まで見ると、私は投資候補として十分検討する価値がある会社だと思っています。

少なくとも、

「株価が下がっているからダメな会社」

とは見ていません。

むしろ業績が悪い時期に会社が何をしているのかを見ると、その企業の実力が分かることがあります。

タウンズについては、今後の新製品販売と中期経営計画の進捗を追っていきたい銘柄です。

※本記事は筆者個人の投資検討・企業分析をまとめたもので、特定銘柄の売買を推奨するものではありません。投資判断は最新の決算資料・IR情報等をご確認のうえ、ご自身の判断で行ってください。

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