今から5年ほど前。
EVといえばテスラがものすごく注目されていた頃、私は中国の「BYD」という会社に目をつけていました。
「この会社、ひょっとしてかなり伸びるんじゃないか?」
そんなことを考えて株を買おうか調べた記憶があります。
ところがBYDの株は日本株でも米国株でもなく、中国本土では深圳市場、外国人が比較的買いやすい株は香港市場に上場しています。
そこで少し怖くなりました。
当時から中国経済には不安がありましたし、中国という国そのものについても、
「もし国同士の関係が悪化したら?」
「何か規制が入って自由に売買できなくなったら?」
なんてことを考えてしまったのです。
会社そのものは面白そう。
でも会社とは関係ないところで資産を動かせなくなるのは嫌だなあ。
そう思って、結局BYD株を買うのをやめました。
それから5年。BYDはとんでもない会社になっていた
久しぶりにBYDを調べてみると、私が見ていた頃とは会社の規模がまるで違います。
2020年に約40万台だった自動車販売は、2025年には約460万台。
今や世界6位クラスの自動車メーカーにまで成長し、王伝福会長は「5年以内に世界最大の自動車メーカーを目指す」と話しています。
2025年にはEV販売でテスラを上回り、海外展開も急速に進んでいます。2026年前半だけでも海外販売は78万台を超えています。
……やっぱり俺の目の付け所、悪くなかったじゃん。
となるわけですが、ここで株価を確認してみると意外なことが分かりました。
あれ? 株価は思ったほど上がっていない
BYDの香港株(1211)の2026年8月14日の終値は88.25香港ドルでした。
BYDは2025年に株数が実質3倍になる株式調整を行っているので、5年前の200香港ドル台という株価とそのまま比べることはできません。
これを調整して5年前と現在を比較すると、実は株価はほぼ同じような水準。
会社は数年間で、
「中国の有力EVメーカー」
から、
「世界最大を狙う自動車メーカー」
くらいまで成長したのに、株を5年間持っていれば何倍にもなっていた、という話ではありませんでした。
これはかなり意外でした。
「BYDを買わなかった俺は大失敗した!」
という記事になると思って調べ始めたのですが、どうもそう単純ではないようです。
なぜ会社は成長したのに株価が伸びていない?
理由の一つとして考えられるのが、中国の自動車市場の猛烈な価格競争です。
BYDの2025年の売上高は過去最高になった一方、純利益は前年比19%減少しました。
中国国内ではEVメーカー同士の値下げ競争が激しく、BYDの自動車部門の利益率も低下しています。
2026年に入ってからも中国国内の自動車販売は弱く、BYDは国内販売の落ち込みを海外販売の急増で補っている状態です。
2026年1~7月ではBYDの中国国内販売が35%減った一方、海外販売は79%増えています。
つまり今のBYDは、
中国で成長する会社
というより、
中国で作った強いEVを世界中に売る会社
へ変わろうとしている途中なのかもしれません。
そして日本に「ラッコ」が来た
そんなBYDが2026年7月、日本市場にかなり面白いEVを投入しました。
その名も
BYD RACCO(ラッコ)。
まさかの軽自動車です。
しかも日本専用に軽自動車規格で開発されています。
RACCO 200の価格は214万5000円からで、補助金を考慮すると実質200万円を切る価格になります。航続距離は約210km。上位モデルでは約320kmです。
これは結構すごい。
中国で売っている車をそのまま日本へ持ってきたのではなく、日本人が大好きな「背の高い軽自動車」をわざわざ作ってきたわけです。
ラッコは日本で売れるのか?
個人的には、これはちょっと注目しています。
日本では新車販売のかなり大きな割合を軽自動車が占めます。
一方で外国メーカーは、この市場へほとんど入れていません。
そこへBYDが、
・軽自動車サイズ
・スライドドア
・EV
・200万円前後
という、日本市場をかなり研究した商品を持ってきました。
しかも発売後約2週間で約1000台の注文が入ったと報じられています。BYD自身は2026年末までに1万台の受注を目標にしています。
スタートとしては結構面白そうです。
一方、日本ではまだ「中国車を買う」ということに抵抗を感じる人も多いでしょう。
販売店や整備網、中古車価格、長期的なブランド信頼性なども、日本メーカーには及びません。
ここを価格と商品力で突破できるか。
ラッコはその試金石になりそうです。
では今からBYD株を買う?
5年前の私は、
「BYDは面白い。でも中国株なのが怖い」
と思って買いませんでした。
5年後の今改めて見ると、その考えは半分当たり、半分外れだった気がします。
会社を見る目としては、かなり当たっていた。
BYDは本当に世界的な自動車メーカーになりました。
一方で、株価だけを見れば「買わなかったせいで資産が何倍も違った」というほどではありません。
そして今でも、中国株特有の地政学リスクや政策リスクがなくなったわけでもありません。
さらに中国国内では激しい価格競争が続き、2025年には利益が減少しています。
その反面、海外販売は猛烈な勢いで伸びています。
日本ではラッコまで投入してきました。
なので私の今の感想は、
「会社としては5年前よりずっと面白い。でも株として今すぐ飛びつくほど簡単ではない」
です。
むしろラッコが日本で本当に売れるのか。
海外販売が中国国内の落ち込みを補えるのか。
この辺をしばらく観察してからでも遅くない気がします。
5年前に見つけて、怖くなって買わなかったBYD。
まさか5年後、日本の道路を「ラッコ」という名前のBYD車が走り始めるとは思いませんでした。
投資って、こういう「買わなかった株」を後から調べ直すのも結構面白いですね。
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