今回は双葉電子工業(6986)について考えてみます。
双葉電子工業という会社は、投資対象として見るとなかなか評価が難しい会社です。
財務は非常に強い。
長年培ってきた技術もある。
産業用ラジコン、ドローン、サーボ、金型関連、有機EL、電子部品など、面白そうな事業もいくつも持っています。会社概要でも、電子機器、生産器材、ロボティクス、有機EL、産業用ラジコンなど幅広い製品群を展開しています。
それなのに業績を見ると、なかなか利益が出ません。
個人的には、
「悪い会社ではない。むしろ持っているものはかなり良い。でも、その資産と技術をどう利益に変えるのかがまだ見えにくい会社」
という印象を持っています。
双葉電子工業とは?
双葉電子工業は1948年設立の老舗電子機器メーカーです。
現在の主な事業は大きく、
電子機器
生産器材
の2分野に分かれています。
製品を見ると非常に幅広く、
産業用ラジコン
ホビー用ラジコン
産業用ドローン
産業用サーボ
複合モジュール
有機ELディスプレイ
金型用器材
プレート製品
成形・生産合理化機器
工作機械IoTシステム
などがあります。
こうして並べると、
「意外と今の時代に使えそうな技術をたくさん持っている会社だな」
と思います。
ロボット、自動化、ドローン、FA、生産設備など、今後需要が増えそうな分野と接点があります。
ところが業績は長く苦戦している
問題は利益です。
2026年3月期は売上高429億8,200万円に対して、営業損失22億8,000万円。
売上高は前期比10.7%減少しました。最終損益は固定資産売却益などによって25億2,200万円の黒字でしたが、本業である営業段階では赤字です。
つまり、
「資産はある。でも本業で稼げていない」
という状態が続いています。
株式投資では、ここが一番気になるところでしょう。
2027年3月期1Qは少し雰囲気が変わった
一方、2026年8月7日に発表された2027年3月期第1四半期決算には、改善も見られました。
売上高は前年同期比4.1%増の108億4,100万円。
営業損失は前年同期の6億400万円から、3億3,500万円へ縮小しました。
経常損益については、前年同期の9億5,000万円の赤字から、1億6,800万円の黒字へ転換しています。
営業赤字なので、まだ「復活した」と言える段階ではありません。
それでも、
赤字幅がかなり縮小している
ことは見ておきたいポイントです。
特に電子機器部門は、産業用・ホビー用ラジコン機器やEMSが伸び、売上高が前年同期比19.5%増の42億3,400万円となりました。
電子機器部門の損失も前年同期より縮小しています。
少なくとも、本業がさらに悪化し続けているという決算ではありません。
最終赤字14億円は少し特殊
第1四半期では親会社株主に帰属する純損失が14億4,700万円となりました。
数字だけ見るとかなり悪く見えます。
しかし主因は、ライセンスおよび役務提供契約に関する約14億9,100万円の特別損失です。
そのため、
本業の営業損失は改善している一方で、一時的な特別損失によって最終赤字が大きくなった
という、少し複雑な決算になっています。
ここは最終利益の数字だけでは判断しにくいところです。
双葉電子最大の魅力は「異常に強い財務」
双葉電子を見ていて最も驚くのは財務です。
2027年3月期第1四半期末の総資産は約1,107億円、純資産は約946億円。
自己資本比率は85%前後という非常に高い水準です。
さらに現金・預金や投資有価証券もかなり保有しています。
普通なら営業赤字が続く会社は、
「資金繰りは大丈夫なのか?」
という心配が出てきます。
双葉電子の場合、その心配は相対的に小さい。
ここがこの会社の面白いところです。
弱い会社なのではなく、「強い財務を持っているのに利益を生み出せていない会社」
なのです。
Brandesが保有比率を9.98%まで引き上げた
もう一つ面白い材料があります。
米国の投資運用会社Brandes Investment Partnersは、双葉電子株を継続的に買い増しています。
2026年7月21日に提出された変更報告書によると、保有割合は従来の8.80%から**9.98%**へ上昇しました。保有株数は423万5,000株です。
Brandesの報告上の保有目的は、顧客に代わって行う「投資目的」です。
5%台だった2022年から段階的に保有比率を引き上げ、現在は約10%まで来ています。
これはかなり大きな比率です。
もちろん、
「海外投資家が買っているから株価が必ず上がる」
わけではありません。
それでも、世界の銘柄を選べる運用会社が、長期間かけて双葉電子の保有割合を増やしているのは興味深い材料だと思います。
なぜBrandesは双葉電子を買うのか?
ここからは私自身の推測になります。
一番分かりやすい理由は、
資産価値に対して企業価値が低いと見ている
のではないでしょうか。
双葉電子は、
巨額の純資産
現預金
投資有価証券
不動産
長年蓄積された製造技術
ラジコン・無線制御技術
金型・FA技術
などを持っています。
それなのに本業が赤字なので、市場から高い評価を受けていません。
逆に言えば、
本業が少し黒字化するだけでも評価が大きく変わる可能性がある
とも考えられます。
政策保有株も縮減へ
会社側も何もしていないわけではありません。
2026年6月には政策保有株式の縮減方針を公表し、保有株式の売却に伴う特別利益を計上する見込みを発表しました。
またグループ経営基盤強化のため、基幹システム刷新も進めています。
不採算事業や資産を抱えたまま何もしない会社から、
資産効率や経営効率を改善しようとする会社
には少しずつ変わっているように見えます。
私が双葉電子に物足りなさを感じるところ
ここまで書くとかなり魅力的な会社に見えます。
しかし私は、双葉電子をまだ全面的には評価していません。
理由は単純です。
「これから何で大きく稼ぐ会社になるのか」がまだ分かりにくいからです。
構造改革、不採算事業整理、固定費削減、政策保有株縮減。
こういった施策は重要です。
しかしそれは基本的に「守り」です。
投資家として知りたいのは、その次です。
ドローン事業はもっと伸ばせないのか?
双葉電子は産業用ドローンや無線通信技術をすでに持っています。
今後、物流、農業、測量、インフラ点検、災害対応、防衛などでドローン需要が拡大する可能性があります。
しかも双葉電子は、単にドローン機体を作るだけの会社ではありません。
長年培った、
無線制御+サーボ+産業機器
という技術があります。
これはかなり面白い組み合わせだと思います。
個人的には、この分野をもっと大きな事業として育ててもよいのではないかと感じています。
生産設備関連にも可能性はある
双葉電子は金型用器材、成形関連機器、工作機械IoTなど、生産現場向けの技術も保有しています。
日本では人手不足が進み、製造業では省人化・自動化投資が続いています。
双葉電子自身もFA市場の成長やスマートファクトリー化を意識し、設備部品の見積・発注をオンライン化する「FO Plus」などを進めています。
このあたりを、
単なる部品供給から、生産現場全体の合理化ソリューションへ
持っていけるかは注目したいところです。
ペロブスカイト関連へ展開する余地は?
これは会社が具体的に発表している話ではなく、完全に個人的なアイデアです。
双葉電子が持つ生産設備・金型・電子部品などの技術を見ると、今後拡大する新産業向けの製造設備や検査装置へ展開する余地もあるのではないかと思っています。
例えば現在、日本で量産化が始まりつつあるペロブスカイト太陽電池。
太陽電池そのものを作る必要はありません。
製造装置、加工、検査、搬送など、周辺設備にも市場が生まれます。
双葉電子のような会社には、
既存技術を新しい巨大産業へ横展開する
という攻め方を期待したくなります。
株価は底値圏から少しずつ戻している
双葉電子株は2026年5月に828円まで上昇した後、6月には527円まで下落しました。
その後は500円台後半まで戻しており、8月18日前場は563円となっています。
まだ派手な上昇トレンドとは言えません。
しかしBrandesの買い増しや本業の赤字縮小もあり、安値圏から少しずつ評価を戻しているようにも見えます。
双葉電子は「復活待ち銘柄」
私が現在の双葉電子を一言で表すなら、
「復活待ち銘柄」
です。
今すぐ高成長企業として買う会社ではないと思っています。
営業赤字はまだ続いています。
一方で、
自己資本比率85%前後
巨額の純資産
現預金・有価証券
無線制御技術
ドローン
サーボ
FA・生産設備技術
政策保有株縮減
Brandesによる9.98%保有
第1四半期の営業赤字縮小
という材料があります。
会社そのものが弱いというより、
「持っているものを利益に変える能力」が問われている会社
だと思います。
まとめ
双葉電子工業は、かなり不思議な会社です。
財務は強い。
技術もある。
資産もある。
世界的な投資運用会社も株式を約10%保有している。
それでも本業は赤字です。
だから現在の株価が安いとも言えます。
今後見るべきなのは、
「赤字を減らせるか」ではなく、その先に「何で稼ぐ会社になるのか」を示せるか
だと思っています。
第1四半期では営業赤字が前年同期の約6億円から約3.4億円へ縮小しました。
ここから営業黒字化まで持っていけるのか。
さらにドローン、ロボティクス、FAなどの技術を新しい成長事業へ変えられるのか。
双葉電子は、
完成された優良株を買う投資ではなく、「眠っている資産と技術が目を覚ますか」を見る投資
という位置づけが面白い銘柄ではないでしょうか。
個人的には、今後も決算とBrandesの動きを追いかけてみたい会社です。
※本記事は企業分析および筆者個人の投資検討をまとめたものであり、特定銘柄の売買を推奨するものではありません。投資判断は最新の決算資料・IR等をご確認のうえ、ご自身の判断で行ってください。
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